結婚式などに列席した際に、お父さんは 洋装のモーニングコートを着ているのにお母さんは和装の留袖を着ている光景を目にしたことはありませんか?
新郎はタキシードで洋装。新婦もウェディングドレスで洋装。母親だけが和装。
よく考えると少しおかしな光景に思えませんか?
見慣れた光景なので日本ではそこまでおかしいと感じる人は少ないかもしれません。
しかし、フォーマルウェアとは世界共通の衣服のガイドラインでありルールです。
世界から見るとその光景は少し奇妙な印象に写るのです。
なぜ母親だけ和装なんだろう…
この答えは、日本独自のフォーマルウェアの特徴と言えます。
そこで今回は、日本にフォーカスしてフォーマルウェアを紹介していきます。
目次
日本での洋装の広がり
日本で、和装から洋装に移ったのは明治維新後の1872年(明治5年)日本全体で外国に追いつけ追い越せというスローガンの元、国全体で洋装化が進んでいました。
その中で服装も太政官布告によりイギリスをベースとしたシステムへ変わっていきます。
フォーマルウェアの基本がなぜイギリスがベースとなっているのかというのは、19世紀イギリスでは産業革命により国全体が豊かに進んでいきそれに伴い、中流階級が台頭していきます。
そこで、身分による格の差をなくしスムーズな交流の場を設け互いの理解を深めようという動きが出てきます。
そしてこの当時のイギリスは世界の中心であり世界のリーダーでした。そんなイギリスのフォーマル文化というものが世界的に普及し国際の場でも使われるようになったことが、現代でもイギリスをベースとしたフォーマル文化が基本となっている背景になります。
当時の日本で定められたのは、燕尾服(テールコート)とフロックコートでした。
しかし、燕尾服やフロックコートの入手は困難でありその中では入手のしやすかったフロックコートが主に着用されるようになっていきます。
ここより、日本独自のフォーマル文化としてフロックコートが定着していきます。
海外に目線を向けて洋装化に踏み切った日本のフォーマル文化でしたが、この頃から入手しずらいという理由で海外とのズレが出てきていたのです。
日本独自のフォーマル文化として洋服が普及し始めた最初の段階でズレが出ていたとは驚きですよね。
また、当時は燕尾服とフロックコートという限られた服装での普及でした。
しかし1919年(大正8年)モーニングコートがフロックコートの代わりとして礼服として認められます。
ちなみにモーニングコートが認定された1919年は原敬内閣です。
では女性のフォーマルはどうだったのか
男性の場合は国家の洋装化に伴い太政官布告のもとイギリスをベースとしたシステムを普及していきます。
しかし女性は具体的に何も制定がされず着物のまま洋装化は普及していきません。
宮中の方や皇族の女性には大礼服・中礼服・通常礼と呼ばれる洋装システムが定められます。
しかし日本全土で見る一般的な洋装化システムは普及せず、依然として和装である着物として定着していったのです。
ここから、男性は洋装化しフォーマルシーンでは洋装を、しかし女性は和装を着るという世界的に見てなんとも奇妙な形が形作られていったのです。
女性の身にまとう衣装の決め方としては、男性の格式に揃えるという決め方が基本でした。
現代でもそのルールが適応されることが多いですが、時代とともにフォーマルのルールも変化をしてきます。
女性も次第に自分自身の立場で格式を決め衣装も選ぶようになってきています。
日本ではなぜ時間帯によって着る服を変えないのか
フォーマルウェアでは昼と夜に区切り、着る服装を変えるというものがありますが日本では現代でも時間帯によって服を着替えるということを意識している人は少ないですし、そもそも知らない人も多いのが現状です。
日本では元々着物文化であり時間帯によってお着替えをするという習慣がありません。
しかし、ヨーロッパでは過去時間帯やシーンによって衣装を変えるという習慣がありました。
朝はモーニングコートを着用し、イブニングの時間(夜)社交会などでは燕尾服(テールコート)を着用し、食事の際も同じく燕尾服(テールコート)。そして食事が終わり男性はタキシードに着替えタバコをたしなみながら雑談を楽しんだ。
時間帯だけではなく、その場のシーンでも着る服装を変えていたのです。
そのような習慣のない我々日本人から見ると、オシャレに見える反面(少しめんどくさいなぁ…)と感じる方も多いかもしれません。
現代でも日本では、「時間」ではなく「場」で衣装を決めています。
その事が垣間見れる場としては新内閣の組閣の場ではないでしょうか。
ニュースなどでもよく見かける風景では赤絨毯の階段で写真を撮るシーンでしょうか。
その場合は夜にもかかわらず皆モーニングを着ています。
モーニングとは本来お昼の時間に着るもの。昼の正礼装に位置付けされています。
本来夜(イブニング)の時間では燕尾服(テールコート)を着用するのが公式のルールになります。
しかし、いつの時代もなぜかモーニングです。いわばこの場はモーニングを着るものという時間ではなくあくまで場で判断しているのです。
これも本来のフォーマルのルールから外れた日本独自の文化として当たり前になっているのです。
なぜ現代でも日本独自のフォーマル文化が?
SNSやインターネットの普及により、海外の情報も昔よりも容易に知ることのできる現代。
世界がより繋がりやすい現代においてもこのフォーマル文化というものでは、日本独自の間違った着こなしは正しくなっていません。
これには、いくつかの理由があると考えます。
まず1つ目は日本ではフォーマルウェアに触れる機会・学ぶ機会がほとんどないという事。
このことからくる知識不足や苦手意識というものがあります。
ヨーロッパでは学生が卒業の際「プロム」と呼ばれるパーティーにてフォーマルウェアを着用する文化があります。この際、男性はタキシードを、女性はイブニングドレスを着ます。
しかし、日本では卒業式では制服ですし成人式においても和装またはスーツを着用します。
最近は成人式でタキシードを着る人もちらほらいますが、やはりまだスーツが一般的。
これは、成人式ではタキシードが正式というお話ではなく、日本ではフォーマルウェアに触れる機会が海外に比べても少ないということです。
また、大人になってからも頻繁にパーティーを開催する方も多くはないのも特徴です。
そもそもフォーマルウェアに触れる機会が少ないので、フォーマルの知識が少ないというのは仕方がないことなのかもしれません。
そのため、フォーマルウェアのルールというものも国際的なルールということを知らず、あくまで日本でのルール。マナーと思っている人がすごく多いです。
日本のルールだから周りと同じでなんら問題なく。間違っているのは周りと同じ服装をしない人という認識があるのです。
もう1つは、日本人の国民性というところでしょうか。
海外から見た日本の国民性は「礼儀がよく優しい」や災害が起きた際では「個々の自分にある責任感の強さや団結力」というものに驚かれる声もよく見かけます。
実際に日本に住んでみて感じる部分としては「個性があまりない」という点もよく挙げられます。
海外では、個人個人が自分というものを表現しやすいというところとの差でしょうか。
日本では、他人と違うということを極力避けなるべくその場に馴染むということを大切にするのです。
周りと同じような服装を好み、個性を出すことよりもその場・団体から外れるということを嫌うのです。
これは、フォーマルウェアでも当てはまり正しい着こなしを知っていても周りと同じということを好み周りと違うということを避ける傾向にあります。
上の人や周りの人がしているのであればそれに従うことで無難にその場を過ごします。
これは今に始まったことではなく洋装化が進んだ時にはすでに起きており、その蓄積が現代でも引き継がれ日本独自のフォーマル文化が根付いているということになります。
今後のフォーマルウェア
以上、日本における和装から洋装化への流れから、現代でも受け継がれる日本独自のフォーマルウェアの公式のルールとのズレというものを解説してきました。
では、今後のフォーマルウェアとはどのようになっていくのか
フォーマルウェアとは、それぞれの格式・文化を統一しその場を円滑に過ごすための共通のルールです。
そのことから基本となる考え方は、昔と同じになります。
しかし、時代とともに少しの変化があるのもフォーマルウェアです。
近年の変化で言えば、女性も自分で着用する服装を選ぶように変化してきています。
その例で言えば、イギリスはウィンザー城で行われた、ユージェニー・オブ・ヨーク王女(エリザベス女王の孫娘)の結婚式にてロイヤルファミリーや多くの有名セレブが出席する中、モデルや女優として活躍するカーラ・デルヴィーニュがタキシードを着用し話題になりました。
また、セレブの中でもレディー・ガガやキムカーダシアンなど多くのセレブがタキシードをモチーフにしたタキシードドレスを着用しています。
以前の女性は男性の服装に合わせた服装をしていましたが、時代とともに女性も自分自身で衣装を選ぶように変化しています。素晴らしいことですね。
結婚式の新郎としてのタキシードも時代とともにスタイルや着こなしの変化があります。
日本では、以前のゆったりとしたリラックス感のあるタキシードから、身体のラインにそったタイトでスタイリッシュな細身が人気です。
実際にお色直しで女性もタキシードを着るということでオーダー・レンタルされる方も中にはいらっしゃいます。
この様に、フォーマルウェアとは時代のトレンドや背景の影響を受けながら、少しずつ変化するものなのです。
しかし、どんなシーンでも自由に着崩したり着るものを選べるわけではなくあくまでTPOをしっかりと踏まえた上で!です。
しっかりとその場、その場での自分の立ち位置、時間という軸はしっかりと基本のルールに当てはめたものの中から自分の個性を出していきましょう。
まとめ
今回は、結婚式の際にお父様は洋装・お母様は和装という少しチグハグした場面の疑問から始まり
日本での衣服の洋装化、フォーマルウェアの普及までさかのぼり、現代まで続く日本独自のフォーマル文化について紹介しました。
時代が進むにつれて、公式のルールからズレてきたのではなく日本に洋装化が広まった当初からズレが生じ現代でも根強く残っていること。
その根底にあるものとしてフォーマルウェアに触れる機会が日本では極端に少ないということ。
そしてフォーマルウェアは基本のルールを持ちながら時代によって少し変化を起こすもの。
フォーマルウェアに関して大切になってくる事、覚えておくべきことはなぜルールが存在し、なぜ決まった衣装を着用するのかという部分
「身分や文化などによる格の差をなくしスムーズな交流の場を設け互いの理解を深める」ためのものという事です。
フォーマルウェアに触れてみて、実際に着てみて自分の感性で感じてみて
「なぜ?」と疑問に思った部分を調べて理解を深めてより楽しく着こなす
和装と洋装でシーンによって着分けることができる日本
選択肢がある分よりややこしく感じてしまいます。
その場その場にあった衣装を着こなすことが出来れば、その場を心より楽しめるものです。
フォーマルに興味を持っていただきこの記事を読んでいただいたこと大変嬉しく思います。
少しずつで構いません。フォーマルを知りあなたのライフスタイルがより良いものになりますように。
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