作ってみようシリーズ
今回はNetflixオリジナルシリーズ『イカゲーム』より、タキシードのデザインや着こなしを紹介していきます。
目次
『イカゲーム』とは、
2021年9月17日、Netflixにて全世界に公開されたファン・ドンヒョクが脚本・監督を務めた韓国のテレビシリーズです。
世界中で大人気となっており、Netflixの「今日のトップ10」では韓国コンテンツ史上初の1位を獲得。
大金を求めて、大人たちが命懸けのゲームを行うサバイバルゲームです。
なんとこの『イカゲーム』にもタキシードが登場しました。
そこで今回はイカゲームで着用されたタキシードのディティールや着こなしを見ていきます。
タキシードで迷われている方、是非参考にしてみてください。
『イカゲーム』のタキシード〜デザイン編〜
襟型
タキシードの印象を大きく左右する襟型ですが、『イカゲーム』ではショールカラーが採用されています。
タキシードの代表する襟型は2つ。
・ショールカラー
・ピークドラペル
ショールカラーは日本では「ヘチマ衿」とも呼ばれる丸くラウンドした衿になります。
スーツには使われることがなく、ショールカラーをタキシードと認識している方も多いくらいタキシードの印象が強い襟になります。
実際は、スーツとタキシードを区別するポイントは襟の形ではなく素材によって変わります。
身頃と同じ素材で仕立ててあればスーツ。
拝絹(はいけん)と呼ばれるシルクで仕立ててあればタキシードになります。
その他、詳しくスーツとタキシードの違いについて興味がある方はこちらでまとめています。
ショールカラーの印象としては、タキシード感がしっかりとありフォーマルでラグジュアリーな印象。
また衿が丸くなっているので柔らかな雰囲気になってきます。
また、国柄の特徴としては「アメリカンスタイル」のタキシードとなります。
タキシードの起源をさかのぼってみてみてもショールカラーがスタートです。
一方、ピークドラペルは上に向かって尖りのある型になります。
こちらは、スーツにも採用される型になります。
上にボリュームがあり、フロントボタンに向けて細くなっていきますので
タキシードの印象としてはスタイリッシュでシャープな印象になります。
襟幅
襟の型が分かりましたので続いては襟の幅です。
タキシードでは、襟の幅も大きく印象を変えます。
型にはすごくこだわりをお持ちの方は多いですが、幅はあまりお考えでない人も多く感じます。
タキシードではスーツとは違い、拝絹(はいけん)と呼ばれる光沢のあるシルク地が使われますので襟というのがスーツと比べて目につくポイントになります。
幅はナローと呼ばれる細いタイプとワイドと呼ばれる太いタイプがあります。
もちろん中間のミドルと呼ばれるものもありますが明確な数字はありませんので、今回は細と太の2つでみていこうと思います。
『イカゲーム』で着用されているタキシードはワイド(太衿)になっています。
しっかりと襟幅があることによって、エレガントな印象が強くなります。
また、ワイドな襟にすることで落ち着きのあるダンディーな印象になってきます。
よって『イカゲーム』で採用されている襟としてはエレガントでダンディーな印象が特徴になっています。
一方、ナロー(細)にすると、ナチュラルな仕立て上がりになり若々しい印象になります。
衿の型が同じものでも、幅が違うだけでこれだけ大きな印象の差が出てきます。
腰ポケット
腰ポケットにも注目です。
『イカゲーム』ではジャケットの腰ポケットに玉縁ポケットが採用されています。
これはタキシードの公式のルールに沿ったデザインになっています。
普段皆さんが着ているジャケットはフラップと呼ばれるポケットのフタが付いたものが多いのではないでしょうか。
このフラップとは雨よけに付いているものであり外で着る服に付きます。
タキシードは元々、室内着になりますので、このフラップがつかない玉縁ポケットが正式というわけです。
最近のタキシードは外で着る機会もありますのでフラップが付いているものも多いですが、本来は付かないのが正式と覚えておきましょう。
ベント
ベントとは、ジャケットの背面裾部分に入る切れ目の事です。
ベントには主に3種類。
・切れ目が入らないノーベント。
・背中心の裾に1本入るセンターベント。
・後ろ脇側の左右に2本入るサイドベンツです。
『イカゲーム』ではセンターベントが採用されています。
タキシード本来のルールではノーベントが正式とされています。
ベントとは乗馬やミリタリー的な要素で取り入れられており、タキシードはその様な目的の服ではないので、ベントの入らないノーベントが正式です。
しかし、現在はセンターベントが入る事が多くラグジュアリーブランドのタキシードにもセンターベントが入っています。
腰周りですので、ベントが入っていると動いた時に運動量が逃げてくれて綺麗に見えます。
『イカゲーム』でも激しいアクションシーンがありますので、それも考慮してのデザインなのかもしれません。
『イカゲーム』のタキシード〜着こなし編〜
デザイン編で、タキシードのデザインについてはお分かりいただけたかと思います。
ここからは、全体的な着こなしを見ていきます。
どのようなコーディネートで着こなしているのか、参考になりますよ。
ジャケットとパンツ:2P(ツーピース)
『イカゲーム』ではジャケットとスラックスをブラックで着こなしています。
2P(ツーピースとはスーツでもよく使われる言葉になります。
ジャケットとスラックスの組み合わせとして揃った状態で使われます。
『イカゲーム』ではブラックの2P(ツーピース)で着用ということになります。
ブラックでクラシカルにフォーマル感のある組み合わせです。
タキシード=ブラックというイメージをお持ちの方は本当に多く、ドラマや映画などのメディアでも
タキシードとしてはよく使われる王道な組み合わせになります。
タキシードのその他の着こなしとしては、「ジャケパンスタイル」というものもあります。
ジャケパンスタイルとは、ジャケットとスラックスで異なるものを合わせる着こなしであり、オシャレ感がグッと出てきたりタキシード感・フォーマル感というのが出てくる着こなしです。
ジャケパンスタイルに関しては、こちらの記事でコーディネートも合わせて紹介しています。
https://onari-consultation.com/jacketpants-style/594/
『イカゲーム』では、豪勢な食事シーンからタキシードを着用していました。
世界観に合わせて、これまでとは違う段階に入っていったということが視聴者に見てわかるように
オシャレ感よりもクラシカルで王道な着こなしをしたのかなと思います。
ボウタイ(蝶ネクタイ)
ボウタイはブラックのバタフライが採用されています。
ボウタイにも様々な形があり、お顔周りに付くアイテムになりますので形が少し違うだけでも大きく印象を変えます。
今回採用されているバタフライとは、蝶ネクタイというと皆さんが想像する形ではないでしょうか。
こちらの形もタキシードの際は王道なデザインになります。
ジャケットとスラックスもブラックで王道でクラシカルな着こなしになっていました。
そこに合わせてボウタイもシンプルで王道なバタフライを合わせることで、全体的な印象をまとめています。
また、ボウタイのボリューム感はあまりなく、横に広く薄いものが付けられています。
これは、既製品であらかじめ形が作られていてフックを使って留めて使用する蝶タイの特徴になります。
一方、手結びのボウタイというものもあります。
手結びとは呼んで字の如く、自分で1から巻いていくタイプになります。
手結びは、ふんわりと立体的にボリューム感が出てくるのが特徴です。
シャツ:ウィングカラーピンタックシャツ
シャツはウィングカラーのピンタックシャツを着用しています。
襟:ウィングカラー
タキシードに合わせるシャツとしての襟の形は2種類。
ウィングカラーまたはレギュラーカラーです。
今回のウィングカラーは立ち衿になっており、ドレッシーな印象になります。
普段のスーツでは着用しないタキシードというフォーマルウェアに合わせるシャツ特有の形です。
タキシード以外では燕尾服(テールコート)でも着用される。フォーマル感のある形になります。
一方のレギュラーカラーは、よりナチュラルで少しリラックス感のある印象。
カフス:シングルカフス
カフスはシングルカフスのシャツを着用しています。
シングルカフスは現在のカフスでは最もオーソドックスな形であり、馴染みある形かと思います。
実はフォーマルシャツの基本のルールではこのシングルカフスが正式とされています。
しかし、現代皆さんが普段から着用しているシングルカフスとは少し異なります。
それは硬さです。
糊でパッキパキに硬めたもの。
その糊を落とすためには、釜茹でしないとダメなほど。
現在のシングルカフスとは別物なのです。
フォーマルのルールではこのパキパキのシングルカフスが正式です。
現在は、糊でパキパキなシングルカフスはあまり見かけずタキシードのシャツで一般的なのはダブルカフスになっています。
長く仕立てられたカフスを折り返しカフリンクスという工具で留め使用します。
カフリンクスが華やかと言うこともあり、現在ではこのダブルカフスが一般的です。
胸元(ピンタック)
『イカゲーム』でのシャツには胸元にピンタックと呼ばれるヒダが入ったシャツを着ています。
普段のシャツではあまり見られないデザインですが、タキシードではこのピンタックシャツが正式です。
これはシャツの誕生まで自体はさかのぼり、シャツは元々下着として着られていました。
現在よりも長く着丈を仕立て股間部分を覆っていたのです。現在でいうパンツにあたります。
そんなシャツを相手に見せるのは失礼に当たるということで、タキシードではベストまたはカマーバンドを必ず身につけます。
しかし、胸元はどうしてもシャツが見えてしまう。
そこでその胸元はには別の生地を当て下着である部分を隠していたのです。
その事から現在でも公式のルールではこのピンタックシャツが正式なのです。
ボタン:カジュアル仕様
シャツは見せては行けない。というお話をしましたが、もう1つ見せてはいけないものがあります。
それはボタンです。
本来、下着であるシャツ。
そのボタンは下着の装飾品に当たります。
これは当然見えてしまうのは相手に対して失礼にあたります。
現在でもタキシードのシャツでは、ボタンを隠すため生地が被さる比翼仕様になっている。
もしくは、本来ボタンが付く右身頃側もボタンホールが開いており、スタッドと呼ばれる工具で留める使用になっています。
1つの場合はスタッドと呼び、基本的には3つ使用するものになるのでスタッズと呼ばれることがおおいです。
『イカゲーム』では、このボタンが見える仕様になっています。
本来のルールではよろしくありませんが、今回のドラマの着用シーンでもフォーマルな場での着用ではありません。
彼らはタキシードを着て命懸けのゲームをしています。その激しいアクションシーンを考えての事でしょうか。あくまで演出の一部としてタキシードを着ています。
パーティーではよくみる着崩しの例です。
ご結婚式でも挙式はルールにそったボタンの見えないシャツ。御披露宴のお色直しではシャツをブラックやデニムシャツに変える方もいます。
結婚式において、挙式は儀式。披露宴はパーティーだからです。
全てはTPOに準じます。
その事から『イカゲーム』でのこのデザインも公式のルールからは外れていますがマナー違反にはならないのです。
『イカゲーム』タキシードのまとめ
今回『イカゲーム』で着用タキシードは全体的にクラシカルで正統派なタキシードでした。
ブラックのジャケットとスラックスで衿はショールカラーのボリュームのあるワイド。
タキシードとしての印象がどれも強い選択になっています。
シャツはウィングカラーのピンタックシャツでこちらも正統派クラシカルな着こなし。
ボタンを見せる仕様にし、ややカジュアルダウンしています。
カジュアルダウンのポイントで言えば本来のタキシードの着こなしであれば、ベストまたはカマーバンドと呼ばれる腹巻き状のアイテムどちらかは入れるルールがありますが今回は着用がありませんでした。
これはやはり演出面での影響が大きいのかなと感じました。
激しいアクションシーンが多く、ベスト・カマーバンドを付けていると動きにくいですしね。
フォーマルのルールを最大限厳守しながら演出のための機能面も考慮して考えられていると思いました。
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