タキシードを選ぶ際、デザインの部分で大きく印象を変える点としてシングルかダブルかという点があります。
タキシードでは、シングルのイメージが強いので「ダブルのタキシードはフォーマルとして大丈夫か」という疑問をお持ちの方も少なくありません。
もちろんダブルのタキシードも大丈夫ですし、最近は海外のレッドカーペットでもセレブがダブルのタキシードをこぞって着用しダブルの波がきつつあります。
こちらの記事ではダブルのタキシードの魅力を解説していきます。
それでは今回のラインナップです。
目次
ダブルの熱再来
日本でのダブルジャケットの流行
ダブルのジャケットというとひと昔前というイメージをお持ちの方も多いのが特徴です。
というのは、日本では80年代後半バブルの時期に「アルマーニ」のダブルのスーツが流行し皆こぞってダブルを着こなしていました。
80年代よりも前はまだ無名であったアルマーニを有名にしたのが1980年に公開された「アメリカン・ジゴロ」です。こちらの映画でリチャード・ギアが着用しアルマーニの名を世に広めました。
80年代に入り、かっちりとしたスタイルからゆとりのあるリラックスしたスタイルに変化したのも大きな特徴です。
なぜ今ダブルが再流行しているのか
ファッションサイクル
80年代に流行したダブルのジャケットがなぜ今流行しているのか。
まず大きな流れとしてファッションの流行は約20年の周期で回っていると言われています。
これはタキシードやジャケットに限った話ではなくファッション全体のサイクルです。
このサイクルの流れで徐々にダブルの流行がきているということになります。最近の一流ブランドでもダブルのジャケットが増えており街に買い物に出ても見かける機会が多いのではないでしょうか。
また近年はSNSの普及により海外のアーティストやセレブが着用しているシーンを見て初めからダブルのタキシードに決めてご来店される方が多いこともあります。
このファッションの流行サイクルというのが大きな1つのキッカケになっています。
80年代とのスタイルの変化
ダブル再流行の理由2つ目としてはスタイルの変化です。
80年代後半のバブル時のダブルはゆったりとしたリラックスしたシルエットでした。
しかし現在主流となっているスーツのシルエットは細身でタイトなシルエット。パンツも裾にかけて絞りを入れテーパードを入れたシルエットです。
タキシードとスーツでは物としては別ですが、シルエットの流行は同じです。
現在流行しているダブルのタキシードも全体的に細身で身体のラインが綺麗にでたシルエットです。
シルエットを変えるだけで同じデザインのものでも全くの別物に見えます。
このようなシルエットの変化によって80年代後半に流行したダブルとは違った現代のダブルとして流行しているのです。
またこうしたシルエットによって「年配が着ているイメージ」であったり「昔のデザイン」というイメージがガラッと変わり若い方からご年配の方まで人気があります。
ダブルの印象とは
ダブルのタキシードはシングルのタキシードよりもかっちりした印象になります。
前身頃部分が重なり合うのでシングルよりも重厚感がグッと出てきて男性らしさという印象が強く出てきます。
また、体格がしっかりしている方が着用すると上半身がよりしっかりとした印象になり貫禄だ出てきてかっこよく着こなしていただけます。
また小柄な方で身長にコンプレックスがある方にもダブルのジャケットになると、シャツの見える面積がシングルよりも詰まって見えることからシングルよりもクラシカルに見えたり目線の位置がシングルよりも上に上がってくることにより脚長効果が期待できることも特徴です。
ダブルのジャケットは大きくダボっとしたイメージの方も多いかと思いますが、身体にそって脇のラインを出すことにより肩幅からのシェイプが強調されて美しいシルエットになります。
また、ダブルのジャケットの場合はパンツを細身にすることにより上から下にかけて細くなりますのでスタイルがよく見えてくるのも特徴です。
スーツとは違う仕立てのポイント
タキシードとスーツでは基本的なディティールは変わりませんが仕立てる際のポイントが少し変わってきます。スーツと同じ様に仕立ててしまうとタキシードとしては安っぽく残念な仕立てあがりになることも。
かっこ良いタキシードを仕立てる際のポイントを知っておくことで特別な衣装を失敗することなく仕立てることができます。
肩パッドは入れよう
肩パッド=バブル期という認識をお持ちではありませんか?
最近のスーツでは、肩パッドを薄くしたり使われていないことが多くなっていますがタキシードの場合、肩パッドが入っていないとかなりカジュアルになります。カジュアルになるだけでなくどれだけ生地がよくても肩の形が出ずラインがうまく出ないのでディティールを見ても肩まわりがクタッと弱くなり安っぽく見えてしまいます。
確かに肩パッドをただ入れるだけでは、ただ肩が強調されガンダムやベジータの様になってしまいます。
肩幅にコンプレックスをお持ちの方や、いかり肩やなで肩などでどうしても綺麗に肩がおさまらない方などが多く、肩パッドに対して苦手意識をお持ちの方もいますが、その様な方にはオーダーをオススメします。
オーダーであれば、人それぞれの体型に合わせて補正を入れることもできますし肩幅の調整だけで解決する場合もあります。
海外では肩幅は男性らしさにつながります。特にアジアの体型の特徴として肩幅が狭いので肩パッドを入れて肩幅を調整することで男性らしさ漂う素敵なタキシードになります。
綺麗なタキシードは肩で決まるといっても過言ではありません。
衿幅=タキシード感
タキシードのダブルジャケットの場合はピークドラペルだけでなくショールカラー(丸衿)で仕立てることもありますが、ピークドラペルの場合は衿幅が重要になってきます。
ピークドラペルはスーツでも使われる衿型になりますので細衿にするとよりナチュラルな印象になり、太くしていくとエレガントな印象になりタキシード感が出てきます。
若々しくスタイリッシュに見せたい場合は細く
大人っぽくダンディーな印象にしたい場合は太く衿幅をしてみましょう。
どの衿でも幅というのは印象を大きく変えてくれます。
自分の出していきたい雰囲気と印象に合った幅を選んでいきましょう。
ダブルのジャケットボタンの留め方
ボタンの数が多いダブルのジャケットですが、そのボタンの留め方とはどのようなものか紹介していきます。
ダブルの場合は、ジャケットに付けられるボタンの数によって印象も大きく変わってきますのでここではボタンの数ごとに解説していきます。
4つボタン
4つの場合、関係してくるボタンの数は2つ。
ボタンの数が4つの場合は2種類に分けられます。
1つ掛けと2つ掛けです。
1つ掛けとは、文字通り2つのボタンの内1つを留める方法です。この場合上のボタンは飾りボタンとなるため、下のボタンのみを留める事になります。
2つ掛けとは2つあるボタンを全て留めます。
6つボタン
6つボタンの場合は関係してくるボタンの数は2つ。
上の2つは飾りボタンであり装飾品だからです。
6つボタンの場合も4つと同様1つ掛けと2つ掛けがあります。
2つ掛けの場合は4つボタン同様。
よりカッチリとクラシカルな印象になります。
1つ掛けの場合は中間のボタンに留めるか1番下のボタンに留めるかで大きく印象が変わってきます。
基本となるのは中央のボタンのみ留める仕様にあります。
アンボタンマナーというものがあるからです。
8つまたは10の場合
スーツでは基本6つまでですが、タキシードの場合は8つや10個ボタンのつくものもあります。
その場合は基本、上の2つのボタンは飾りボタンになりますので8つの場合は6つ。10個ボタンの場合は8つでどの様に留めるか決めていきます。
ボタンの留める位置によって胸もとのVゾーンのシャツの見え方が変わってきます。
ボタンの数が多いと華やかになりますが、少し衣装っぽく感じられる方もいます。
タキシードとしての特別感を大切にする場合は多めのボタンの数もオススメです。
クラシカルさを大切にする場合は6つ、4つがしっくりくる場合が多いです。
アンボタンマナーとは
アンボタンマナーとはジャケット、ベストの1番下のボタンを留めないというルールになります。
これはスーツでもタキシードでも同じです。
1番下のボタンは飾りボタンとなるからです。
キッカケは19世紀初めジョージ四世がベストの1番下のボタンを留め忘れて出席し、それを見ていたボー・ブランメル(ジョージ・ブライアン・ブランメル)がジョージ四世に恥をかかせないために1番下のボタンを外したのです。
ブランメルは社交界の帝王と呼ばれ、ファッション界の権威であったブランメルとジョージ四世がボタンを外していることから、現在はこれがマナーなんだと周りの人々が思い込み、そこから現在でも1番下のボタンは留めないというアンボタンマナーが生まれました。
ちなみにこの説には、ジョージ四世が1番下のボタンを留め忘れたという説と、お腹が出てきてボタンを留められなかったという説もあります。
現在では、1番下まで留めてしまうとシワがはいりやすくなることから下のボタンを外した方がシルエットが綺麗に見えるという点からも1番下のボタンは外すのが一般的です。
(ジョージ・ブライアン・ブランメル)
ダブルの場合は下まで留めてもOK
アンボタンマナーについて紹介してきましたが、イギリスの皇太子であるチャールズ皇太子はよくダブルのジャケットを着られるのですが、その際はアンボタンマナーを適用せず下のボタンまでしっかりと留めています。
ボタンの配置
ダブルのジャケットに付けられるボタンの配置によっても違いがあります。
左右のボタンが直線に配置されているものをオールインライン。
上の飾りボタンがやや外側に取り付けられた配置のものをスプレットアウトと呼びます。
現在一般的なのはスプレットアウトです。
まとめ
ダブルにはシングルにはない魅力がたくさんです。
スーツ好きな方でも生粋のダブル好きは数多くいます。
ダブルには着る人を虜にする何かがあると僕は思います。
これは言葉では表すことの出来ない感覚的なものに近いでしょう。
「ビビッときた」というやつです。
実際に来店された方でも初めからダブルのタキシードに決めていた方ばかりではなく興味本位で試着したり、お客様のお持ちのイメージでご提案をさせていただき着てみたら最終的にダブルのタキシードになる方も本当に多いです。
一度袖を通すことの出来る機会があったら是非とも一度着て見てもらいたいです。
着てみて自分の中でビビっとくる場合と来ない場合がありますが、着てみないと分かりません。
自分で自分の中のファッションという世界を狭めず、どんどん新しいものに挑戦し経験していきましょう。
それではまた、別の記事でお会いしましょう。
おなりでした。
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