ジャケットの謎の割れ目〜ベントとは〜

ジャケットの裾に部分から割れ目がある事を知っている人も多いはず。

「あれは一体なんだ…あれがあるからと言って便利に感じた事もないし、デザイン？？」

「モヤモヤして夜もぐっすり眠れません。どうにかしてください！」

そんなあなたに向けてあの”割れ目”の正体をズバリ解説していきます。

割れ目の謎を明かして今夜はぐっすり眠りましょう！

ベントとは

実はあの謎の割れ目には名前があります。

その名は「ベント」（vent）。割れ目であることに間違いがないですが

ベントは割れ目で布が重なっていることが特徴です。

突き合わせの割れ目は服飾用語では「スリット」（slit）と言います。

すごくややこしく聞こえますが、布が重なっている場合はベント

布の重なりがなく突き合わせになっていればスリットと区別して理解しましょう。

日本では、一般にベンツと呼ばれる事が多いですが

ベントとは、センターベントのような割れ目が1つの場合に用いられ

サイドベントのような割れ目が2つになると、複数形になりベンツと呼びます。（vents）

ベントの種類

ベントにもいくつか種類があります。

体格や運動量など様々なポイントによって適しているベントは変わり使用されるベントが異なります。

ベントにはどのような種類があるのか解説していきます。

・センターベント（center vent）

　英国人が乗馬する際にハッキングジャケット（乗馬服）の裾をカットして乗りやすくした事が始まりとされ、センターベントがある事で乗馬した際に馬の背中で綺麗に左右に割れ美しく見えます。

このことから「馬乗り」と呼ばれることもあるベントです。

背中部分の縫い目の下部が開くベント。このベントの深さ（長さ）は流行やデザインによって異なります。

最も基本的なベントとされ多くのジャケットで見る事ができます。主にシングルのテーラードジャケットに見られます。

・サイドベンツ（side vents）

　サーベルを腰に挿す際に便利なように両脇に割れ目を入れた事が由来とされる。

両脇の裾を割ったもので、日本では「剣吊り」と呼ばれる事もあります。

運動量の多い職業の方にはオススメです。

英国調のスーツに多く見られ、既製品では主にダブルのジャケットに多く見られます。

・フックベント（hook vent）

　センターベントの一種でモーニングコートで見られるベント。

フックという名の通り「カギ」の意味があります。

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1950年代にアメリカで生まれたファッションスタイルであるアイビールック。そのアイビーのスーツにも用いられ、クラシックな印象があります。

ベントの選び方

ベントにも種類がある事が分かりましたが、どんな基準でベントを選べばいいのか。

特に近年スーツのオーダーもイージーオーダーなどで身近なものになりました。

イージーオーダーではなかなかベントの種類まで選べる事も少ないですが

いざ、オーダーをする際、次回既製品のジャケットを購入する際

ベントはどのように選べば良いか解説していきます。

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シルエット

まずはお好みのシルエットでベントも選んでいきましょう。

・細身でスタイリッシュ：細身の場合はサイドベンツにしてしまうと、腰部分でベンツが大きく開いてしまいます。デザインの印象としてもスタイリッシュで正面から見てもスッキリ見えるセンターベンントがオススメです。

・ゆったりとクラシカル：腰回りからヒップにかけてサイズが大きい方（骨格などの特徴もあります）はヒップ周りにもゆとりの取れるサイドベンツの方がオススメです。

ジャケットの着丈

ジャケットの着丈で選んでいきましょう。

・着丈が短い：先金のトレンドとして、着丈の短いスーツがあります。着丈の短いジャケットの場合サイドベンツにしてしまうと腰周りでベンツが広がり正面から見たときもスッキリきれいに見えません。

正面から見てもスッキリ見えるセンターベントの方が適しています。

・着丈が長い：逆に着丈が長い場合は、腰回りまですっぽり覆うためサイドベンツの方がきれいに見えます。

印象

最後にベントが持つそれぞれの印象について紹介します。

・センターベント：若々しくスタイリッシュな印象

・サイドベンツ：大人っぽく落ち着いたダンディーでエレガントな印象

まとめ

今回はジャケットに存在する謎の割れ目「ベント」についてご紹介してきました。

デザインとしては、腰部分に入るため目立った存在ではありません。

しかしベントが与える印象はとても大きく。

お客様としても着丈や生地などによって様々なベントを選ばれる方や、これ！と決めたベントで常にお仕立てされる方もいらっしゃいます。

ベントを意識して試着して見ると、着心地や機能面など意外と大きな違いがあります。

細かなディティールにもこだわりを持つ事がダンディーへの道ですし、是非、実際に体験していただきたいです。

無事、謎の割れ目の正体が分かり今夜はぐっすり眠れる事間違いなしですね（笑）